MIDIデータのドラッグアンドドロップを正しく動作させる方法

Cubase&プラグイン

CubaseのMediaBay(メディアベイ)からMIDIデータをドラッグアンドドロップしたとき、勝手に沢山の新規MIDIトラックが追加されてしまい困ったことはありませんか?

また、プラグインのMIDIエクスポート機能からドラッグアンドドロップしたときに、意図しない新規MIDIトラックが山ほど追加されてしまったりして、希望通りのトラックにペースト出来なくて困ったというケースはありませんか?

このような問題は環境設定の「MIDIファイル」の項目を設定することで解消できます。

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意図しない新規MIDIトラック追加の例

まず、今回ご紹介する方法で解決できる問題の例をいくつか挙げていきます。

MediaBayからのドラッグアンドドロップ

MediaBay(メディアベイ)からMIDIファイルを直接ドラッグアンドドロップしたとき、チャンネルの異なるデータ用に新規MIDIトラックが追加されたり、システムエクスクルーシブ情報用のMIDIトラックが新規作成されたりするケース。

チャンネル分割せずに一つのMIDIトラック内で作業したい場合、このような自動処理は困ります。

プラグインからのMIDIエクスポート

プラグインのドラムインストゥルメントなどには、演奏パターンデータ(ファイル)をMIDIトラック上にエクスポート出来るものがあります。

ところがエクスポートしようとドラッグアンドドロップしたとき、意図したトラックにMIDIデータをペースト出来ないケースがあります。

例えば、指定したトラックではなく、いくつか下段のMIDIトラックにペーストされたり、新規MIDIトラックがいくつか追加されてそこにペーストされたりといった現象が起きます。

問題が発生する可能性のあるプラグインとしては、「Addictive Drums 」「Handy Drums」「Stylus RMX」などが挙げられ、恐らくMIDIエクスポート機能を持つ多くのプラグインで同様の現象が起き得るものと思われます。

下の画像は、Stylus RMXでMIDIパターンデータをエクスポートしたときの様子です。

MIDIパターンデータを「赤い枠」の位置へドラッグアンドドロップでエクスポートしたものの、3つ下のMIDIトラックにペーストされてしまいました。

もしMIDIトラックが足りない場合は、自動的にトラックが追加されてペーストされることになります。

ちなみにこの時、いくつ下のトラックにペーストされるか(新規トラックが追加されるか)は、エクスポートしようとするMIDIデータのチャンネル番号によります。
上記画像の場合、MIDIデータのチャンネル番号は「4」ですので(矢印A)、データをドロップしたトラックを「チャンネル1」として、下へ順番にチャンネル2、3、4と割り当てた4番目のトラックにペーストされることになります。

解決方法~環境設定の「MIDI>MIDIファイル」

この問題は、CubaseがMIDIファイルをトラックにペーストする際、「そのファイルタイプが0の場合の動作を選択できる」という仕様が原因になって起きています。

※「ファイルタイプ」については、この後に解説します。

問題が起きている場合は、環境設定の「MIDI>MIDIファイル」にある項目「ファイルタイプ0の場合はチャンネルを分割」の状態を確認して下さい。

問題が起きている場合は、この「ファイルタイプ0の場合はチャンネルを分割」の項目をオフにしてください。

この項目にチェックが入っていると、MIDIファイルをドラッグアンドドロップしたとき、自動でチャンネルごとに分割して、必要に応じて新規トラックを割り当てる動作をするようになります。

これが「意図しない新規MIDIトラックの追加」や「意図しないMIDIトラックへのペースト」といった動作につながっています。

今回のような問題を抱えている場合は、この「ファイルタイプ0の場合はチャンネルを分割」という設定項目のチェックを“外す”ことで解決する可能性があります。

【補足解説】「MIDIファイルタイプ0と1」について

環境設定で扱われている「ファイルタイプ0」とは、MIDIデータの保存形式であるスタンダードMIDIファイル(SMF)の種類のことです。SMFには主なものとして「タイプ0」と「タイプ1」があります(タイプ2もありますが、現在ほとんど使われていません)。

タイプ0(Single Track)

  • 特徴: 全てのMIDIデータが1つのトラックにまとめられています。
  • 内容: 複数のMIDIチャンネル(パート)のデータが含まれていても、時系列に沿ってすべてのイベント(ノート、コントロールチェンジ、プログラムチェンジなど)が一つのシーケンスとして記録されます。
  • 用途と性質: ファイル構造がシンプルですが、DAW上で個別のパート(楽器やチャンネル)ごとに編集・管理するのがやや煩雑になります。主に、単一の演奏やシンプルなフレーズを記録する場合などに使われます。

タイプ1 (Multi-Track)

  • 特徴: MIDIデータが複数のトラックに分かれて記録されています。
  • 内容: 各トラックが特定のMIDIチャンネルや楽器パートに対応していることが一般的です。これにより、トラックごとに独立したシーケンスとしてデータが整理された状態で格納されます。
  • 用途と性質: 現在のDAWで作成されるほとんどのMIDIシーケンスはこのタイプです。パートごとの編集やアレンジが非常に容易です。

Cubaseの環境設定にある「ファイルタイプ0の場合はチャンネルを分割」という項目は、この「タイプ0」のMIDIファイルをプロジェクトに取り込む際に、1つのトラックに混在している複数のチャンネルデータを自動的に検知し、チャンネルごとに分けて新規のMIDIトラックとして配置し直すかどうかを制御するためのものです。

これにより、タイプ0のMIDIファイルを、タイプ1のようなマルチトラック形式に自動的に変換して読み込むことが可能になります。

しかし今回の様に、この自動変換機能がプラグインのエクスポート機能と干渉して問題を生じることがあるというわけです。

後書き

この問題は何か致命的なトラブルを生じるタイプのものではなく、不要な新規MIDIトラックを削除したり、誤ってペーストされたMIDIデータを移動させることで復旧できる程度のものです。

しかしその面倒な復旧の手間はクリエイティブな気持ちに水を差してしまうため、案外無視できないものだと言えます。

今回の問題に対して、これまで渋々対応してきた場合は、ぜひこの設定を見直して環境を改善してください。